今回はお気に入りの車から「ユーノス500」を取り上げます。
ユーノス500の初出は、1991年の
東京モーターショー。
当時はまだバブルの真っ只中にあり、
マツダは国内シェア10%を目指したMI計画に基づいて販売5チャンネル化をスタートしていました。
1989年の
ロードスターの誕生により
ユーノスブランドが立ち上がり、
プレッソ、
コスモとラインナップを増やしていきます。その後、スタイリッシュで高級という
ユーノスブランドにふさわしいセダンとして
ユーノス500、800、そして日の目を見ることのなかった1000が企画され、そのトップバッターとして1992年2月にこの
ユーノス500がデビューします。
「
今までにない最高の一台を」という開発陣の志は高く、本物の高質感を求めた志の高いデザインとこだわりが随所に見られます。そのスタイリングはデザイン界のマエストロ、ジュジャーロをして「
奇跡」と言わしめるほど。
日本ではグッドデザイン賞を受賞、そして、ヨーロッパではドイツを代表するマガジン「アウトモトール・ウント・シュポルト」の読者人気投票で
輸入車部門ミドルクラスで第一位を獲得しています。
販売的にはバブル崩壊の影響もあり、初年度こそ良かったものの苦戦を強いられ、1996年の
ユーノスブランド消滅とともに日本の販売ラインからは姿を消すこととなります。これほどの車がわずか4年足らずで姿を消すのは残念でなりません。
一方でヨーロッパではその高い品質とスタイリングが認められ、国内を上回る販売実績を記録し、国内生産終了後も
マツダのアイデンティティを誇示するセダンとしてクセドス6(輸出名)の名をラインナップに留めていました。
お膝元である当時の日本国内では受け入れられず、ヨーロッパでは賞賛を持って受け入れられるのは皮肉なものです。往々にしてよくあることですが、日本人はもっとものを見る目を育てなければなりません。
また、この時ヨーロッパの各メーカーはこの車の
エッセンスを巧みに取り入れその後のモデルに活かしてきますが、日本では(
マツダ自身も含め)売れない形というレッテルを貼っただけでした。
さて、そのエクステリアデザインは、一言で表すなら「
オーガニックな形態」ということでしょうか。オーガニック形態を極めて意識的に果敢に取り入れています。
このことはこの車のデザインチームがトータルデザインでの秩序構築にあたって、
自然界に美しさを求めたということです。自然界に存在するものには無駄がなく機能的で、なおかつ時代とか流行に流されない普遍的な美しさまでもを併せ持っており、上手く取り入れればこれほど魅力的なものはありません。もっとも、下手に扱えば逆に不自然な面や形状を生んでしまうおそれもあり、難しいテーマです。それを考えると、デザイナーもそうですが、何よりも
モデラーの力量も素晴らしかったということでしょう。
余談になりますが、個人的に現在のユークリッド幾何学をベースとするデザイン、設計というのはやがて変わっていく必要があると思っています。発送の根源が人間が考え出した3次元空間にすぎないからです。
宇宙そのものは10〜11次元の世界といわれ、自然界の形態・法則もそれに従っているとすれば今後のデザインの方向は
トポロジー空間論から入るべきではないかと思っています。そこには今までにはないデザインの世界が拡がっているように直感的ですが思っています。
話を戻しますが、この車のサイドの断面形状は先頃デビューした
エスティマ同様にS字型の断面形状を採用していますが、そのクオリティの高さは
比べるのも失礼なほどその形状は完璧といっても良く、優れた面のハリとしなやかさを併せ持っています。また、このドアの断面形状のDNAは、一見しただけでは分かりませんが、ホイールにも取り入れられ全体の調和を高めています。
ユーノス500の優美なボディスタイルをより分かりやすく表現すために、「ハイレフコート」と呼ばれる高品質の塗装を施し美しいリフレクションを映し出しています。そしてそれは車の美しさだけではなく時の移ろいや季節の移り変わりを映し出し、
ユーノス500の新たな魅力となります。
「たら」、「れば」話をしても仕方がないのですが、(よく言われることですが)この車のデビューがあと10年遅ければ商業的に成功できたかもしれません。しかし、この車がなかったとしたら自動車デザインのレベルがそこまで上がったかどうかもまたわからないことです。
ただ、はっきりしていることはこの車は間違いなく世界のカーデザイン史に残るものだということです。
最近では欧州のメーカーからもなかなか優れたデザインが出てきていません。世界的な不況が無難な方向へとデザインを誘導し、小さくまとまったデザインになりがちです。しかし、
BMWに代表されるような冒険的なデザインの車が登場しつつあるのも事実です。近いうちに意欲的でチャレンジングな
ユーノス500のような志の高い車と出会えることを期待しています。